新卒フリーランスの生存戦略

就活で全社にお祈りされて彼女にもお祈りされた難病患者がフリーランスエンジニアになって人類の幸せをお祈りする話

SFC-LT 2.0 | メディア型の奨学金をつくろう

スケーラビリティのある新しいタイプの奨学金を作りたいと思う。

実はこれは2年ほど前にSFC-LTというプロジェクトで1度挑んで失敗した取り組みだ。 ここでは以前のSFC-LTがどこまでうまくいき、何に躓いたのかを振り返りつつ、それを踏まえて新たなバージョンを提案する。

はじめに

SFC-LTはメディア型の奨学金のプロトタイプをつくるプロジェクトである。

このプロジェクトの目的は、既存の奨学金が抱える問題を解決し、持続可能でスケールする奨学金を作ることである。 我々は、ソーシャルメディアクラウドファンディングを組み合わせたメディア型の奨学金によって、これを実現しようとしていた。

SFC-LTの「ペイ・フォワード・チャレンジ」というコンセプトに表されるように、 挑戦のために受けた支援を次の誰かの挑戦へと繋ぎ、その流れをより広く大きくしていくことを目指した。

背景

既存の奨学金の問題点

これまでの奨学金は貸与型と給付型の2つに分けられるが、それぞれ仕組みに問題がある。 まず、貸与型奨学金に関しては奨学金と銘打っているが、その実態は単なる学生ローンに過ぎず、 学生に選択肢を与えることはできても、それ自体が学びのインセンティブになることはない。

次に、給付型の奨学金について、こちらは①応募に手間が多く②申請者数が増えても全体の給付額が増えることはない。 ③審査に落ちれば学生の側は得るものがなく、支援すべき学生の時間を搾取しただけの結果に終わる。 また、支援者の側すると④少額からの支援がしづらく民間では企業や資産家しか作ろうとしない。 そういった点で給付総額がスケールしなくて、学生同士のパイの奪い合いになるだけである。

本プロジェクトの目的

本プロジェクトの目的は、応募者数に応じて支援総額がスケールするような奨学金を設計し、この問題を解決することである。

SFC-LT 1.0でのアプローチ

我々は、その手段としてソーシャルメディアクラウドファンディングを用いたメディア型の奨学金を提案し、SFC-LTというプロトタイプを作った。

SFC-LTでは、学生に3分間で自分のチャレンジをプレゼンしてもらい、その動画を公開する代わりに1万円を支援する。 そして同時にその学生への追加の支援をクラウドファンディングし、そこからの一部手数料を用いて次の学生の1万円を捻出する。

これならば、学生はいちいち応募先のフォーマットに合わせて書類を書く必要がないし、 日頃から活動的な学生はアウトプットを再利用できるため、応募の手間を最小限に抑えることができる(①の解決)。 また、SFC-LTの応募者数が増えれば、この奨学金のコミュニティが拡大し、ソーシャルメディアの拡散力が上がり、クラウドファンディングで集まる金額が増える(②の解決)。 そして、3分間の動画に対して確実に1万円がもらえるので時間を搾取しただけで終わることもない(③の解決)。

支援者もクラウドファンディングを用いて少額から支援ができる(④の解決)。

SFC-LT 1.0の概念実証(PoC)

この奨学金が持続可能でスケールするかは学生がクラウドファンディングを行った際に集まる金額に依存している。 仮に手数料率を20%(一般的なクラウドファンディングの手数料率)とすると、1学生あたり10万円を集めることができれば、諸経費を考えても次の学生の1万円を捻出することが可能だろう。

その実証のため、2020年1月に私自身が3分間のプレゼンテーション動画をアップロードし、このメディア型の奨学金自体を提案するクラウドファンディングを実施した。

結果としては126名の方から総額50万円を集めることができ、1学生あたり10万円という目標値を大幅に上回った。 SFC-LT 1.0はキャッシュフローの面では十分な可能性があることを示した。

プロジェクトの頓挫

しかしながら、本プロジェクトは2020年6月に一時中断し、クラウドファンディングの返金手続きをするに至る。 経緯に関してはこちらの記事にまとめたので参照願いたい。

SFC-LT 1.0の課題

SFC-LT 1.0には3つの大きな課題があった。

第1に、学生のコストが大きすぎた。SFC-LT 1.0では「撮影会」と呼ばれるオフラインイベントを開催し、そこで学生にプレゼンをしてもらい動画を撮っていたが学生の側にコストがかかりすぎていた。クラファンのリターンの設計に関しても学生に関しても学生の負担になりやすかった。

第2に、運営側のコストも大きすぎた。クラファンのリターン設計のために前述の「撮影会」を実施していたが、オフラインイベントは日程調整や会場確保の手間が大きく運営に大きな負担となっていた。

最後に、SFC-LT 1.0ではPoCのため、「学生」と「運営」の両方の役割を私が演じていた。 つまり、私が単一障害点となっており、私自信が高負荷になるとプロジェクト自体が全く進まなくなった。 事実、「プロジェクトの頓挫」で書いたような自体に陥った。

今回のプロジェクトの目的

今回のプロジェクトの目的は、メディア型奨学金キャッシュフロー意外の面での持続性を検証するとともに、持続可能な最小構成のモデルを実運用することである。

アプローチ(SFC LT 2.0)

新たなメディア型奨学金のプロトタイプ、SFC-LT2.0を用いる。

SFC-LT 2.0では、140文字のツイートによる1次選考と3分間の動画提出による2次選考を設け、2次選考の通過者に対して1万円を給付して動画を公開する。(ほぼ1次選考の通過者100%を予定)

また、オフラインイベントとクラウドファンディングを廃止することで運営と学生のコストを最小限に下げる。なお、クラウドファンディングの廃止によって失う財源については、当面の間、私が出す。(これによって支援総額のスケーラビリティが保てなくなるが、今回のプロジェクトの目的のスコープ外のため、無視する。)

今後のアクション

  • いろいろ問題は起きるだろうけれど、とにかく始める
  • 継続可能な最小構成の仕組みを担保する。
  • 運営コストがかかるなら自動化する。
  • バージョンアップを重ねながら、少しづつキャッシュフローを改善して、財源が私に依存しなくても回る状態に持っていく。

最後まで読んでくださった皆様へ

SFC-LT 1.0は概念実証のためのプロトタイプだったのに対し、 今回のSFC-LT 2.0はキックスターターとしてのプロトタイプです。

燃料が切れる前にこのプロトタイプをエコシステムに昇華させられるかが勝負の鍵です。

もっと現実的に言いうなら、私の資金が尽きるのが先か、我々がキャッシュフローを安定させられるのが先か、それだけの話です。

ただ、焦る勝負ではありません。

我々はスタートアップではなく、スケールアップを目指すNPOだからです。

VCの償還期限も株式契約も気にする必要はありません。

一歩一歩、自分たちの歩幅で、着実に仮説検証を進め、目的を達成します。

NPO法人 湘南藤沢Projects

代表 宮元 眺